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意外とおもしろかった「ルパン三世 風魔一族の陰謀」 [映画の雑感日記]

「ルパン三世 風魔一族の陰謀」☆☆☆★

 もう3か月ほど前になるが、モンキー・パンチ(加藤一彦)さんが亡くなった。モンキー・パンチといえば「ルパン三世」、というか「ルパン三世」だけの人だった。そのルパンは、漫画のころは女は犯すは人は殺すはそれなりの「悪漢」だったが、いつの間にか「いい人」になってしまった。まあ、本家アルセーヌ・ルパンも中期以降は愛国者であり冒険家のドン・ルイス・ペレンナだったり、探偵ジム・バーネットだったりするので、それに習ったわけだ。・・・というのは全くのデタラメで、テレビアニメではそもそも悪漢では企画が通らないのだろう。そのアニメの設定が漫画にもブーメランで、漫画のルパンもいい人になってしまった。また、五ェ門などルパンの命を狙う恐ろしい敵だったのだが、これまたいつの間にかルパンの頼もしい見方になってしまった。

 というような話はともかく、本作は「ルパンVS複製人間」「カリオストロの城」「バビロンの黄金伝説」に続く劇場版ルパンの第4作だそうだ。
 1987年の映画だというのだから、もう30年以上も前のアニメだ。歳が歳なので、「時代遅れ」なんて言われるのには慣れっこだが、今さらこの古いアニメを見ているのは、自身で考えても時代遅れ。
 今さらバカか、なんて言われそうだが、「ルパン三世」は週間漫画アクションでの第1回から読んでいるものの、格別のフアンというわけでもない。アニメに関してはテレビ版の出来のいいもの何本かと「カリオストロの城」だけあればいいという人間なので、アニメシリーズを追っかけているわけではない。

 だったらなんで今になってそんな昔のアニメをということになるわけだが、大塚康生が作画監督をしているという話をルパンフアンの知り合いから聞いたからである。伝説の「太陽の王子ホルスの大冒険」にしろ「カリオストロの城」しろ、この人が作画監督をしている作品は駄作にはならないので、私は信頼しているわけだ(聞いた話では「作画監督」だったが、アニメのクレジットを確認したら「監修」だった)。で、見てみようかということになった。まあ、大塚康生がかかわったアニメは(興行的には)コケルという伝説もあるが、ヒットしたかどうかは見る方には関係ない。

 話は、ナントあの五ェ門の結婚式から始まる!と書いてもほとんどの人がすでに見て知っているだろうから簡単に書く。結婚相手の紫(クラリスなどよりはよほど活発な女性で好感がもてる。ただし、クラリスほどかわいくないのは大減点)が風魔一族にさらわれ、隠し金庫の中からは莫大な財宝にまつわる黄金の鍵が入った壷が発見される。どうやら飛騨高山だったかの山奥の洞窟の中に黄金の城があるらしい。しかし、そこへたどり着くまでには様々な罠が仕掛けられた洞窟を進まねばならず(「レイダース」)・・・、というもの。全体の骨組みはあの「カリオストロ」と言ってよい。少なくとも、大塚が監修にあたり「カリオストロ」を意識していたことはまちがいないだろう。
 冒頭登場する風魔一族のコスチュームは「カリオストロ」でホテルに現れる殺人鬼集団とそっくり、城内の歯車はカリオストロ城の内部の歯車を連想させる。五ェ門とヒロイン紫との過去ので愛の回想シーンもルパンとクラリスとの出会いの回想シーンを意識したものであることまちがいない。森の中を走るシーンや、パトカーとの公道でのカーチェイスも同様。

 「カリオストロ」ほどではないにしろ話はそこそこしっかりしており、アニメの動きも悪くない。にもかかわらず、何か微妙な違和感があるの。「本物」のルパンと何か違うぞ、と誰かが頭の中でささやきかけてくるのだ。その理由は、見終わった後、再度冒頭のクレジットを見て判明した。
 レギュラー陣5名の声優が総て変更されているのだ(カッコ内がそれまでのレギュラー声優)。
 ルパン三世・古川登志夫(山田康雄)、次元大介・銀河万丈(小林清志)、石川五ェ門・塩沢兼人(井上真樹夫)、峰不二子・小山茉美(増山江威子)、銭形警部・加藤精三(納谷悟朗)といった具合(カッコ内がレギュラー声優)。(ルパンフアンの間では有名な話かもしれないが)声優陣が総て代わっているのだ。
 アニメのシリーズものは絵と声が合致して初めて成立する。そんなことはド素人でもわかるはずだが、山田が亡くなりルパンの声が栗田に代わったのとは訳が違うのである。それなりの事情があったのかもしれないが、なんでこんなバカなことをしてしまったのだろう。何か理由があったのだろうが、手を付けてはいけない禁断の部分に手を付けてしまったのだ。次作からはまた元の声優に戻っているのだから、よほど抗議が殺到したのだろう。フアンでもない私にも、その気持ちはわかる。

 登場する車がフィアット500、シトロエン2CV、日産ブルーバード410型など「カリオストロ」に登場したものが再登場(ナンバーなどは日本のものになっている。県警も埼玉県警ではなく岐阜県警)するのは、もちろん大塚康生の指示だろう。登場する列車も多分実際に存在する鉄道車両らしく見えるので、手抜かりはない。水陸両用シーンでマフラー(排気管)が伸びて水面上に出ているなど、さすがに大塚監修は芸が細かい。
 そうしたこともあって、それなりにおもしろく見られた佳作ではあった。上に声優陣の変更による「違和感」があったと書いたが、それは見ているうちにそれほど感じなくなったことは、付け加えておきたい。新たな声優陣は別に下手ではない。かつて「スターウォーズ」(epi.4)がテレビ発放映されたとき、レイア姫の声を聞き、多くの視聴者(私もその中の1人)が腰を抜かした大場久美子のような無能は誰1人としていない。皆、プロなのだ(ただし、今回の主役とも言える五ェ門の声だけは大時代ががった井上のほうがやはりよかった。「カリオストロ」の五ェ門の「可憐だ・・・」などもはや世界文化遺産に登録されてもおかしくない)。
 ルパンフアンなら必見。なぁんて30年も前のアニメに対して言っているのは私だけで、フアンはとっくに見ているんだろう。要するに、このアニメを見ていなかったのは、時代遅れのおっさん、私唯1人ということか。(;_;)

↓予告編ないので「カリオストロ」で我慢して。m(__)m
https://www.youtube.com/watch?v=wYGfRDmmba8
ルパン.jpg
☆★は、尊敬する映画評論家・双葉十三郎さんの採点方法のパクリで、☆=20点、★=5点(☆☆☆が60点で「可」。合格というか、まあ許せるラインということです)
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