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水木フアンの見た「ゲゲゲの女房」 [テレビの雑感日記]

「ゲゲゲの女房」☆☆☆★

 私は何を隠そう(いや、別に隠すつもりもないが)中学生、もしかすると小学生のころからの水木フアンなのである。もちろん、貸本まんがの時代である。「ゲゲゲ」ではなく「墓場鬼太郎」「河童の三平」「悪魔くん」、さらには珍品の「化鴉」なんてものまで貸本で読んでいる。どうだ(自慢である)。
 貸本時代の鬼太郎は本当に怖かった。
 子どものくせにタバコは吸う、酒は飲む、逆らう奴は地獄流しにしてしまう。だから、出版社にいた人間として、多くの読者を相手とするマスコミ雑誌(「少年マガジン」)では仕方ないとはわかってはいても「ゲゲゲの鬼太郎」のような正義の味方になってしまうと、なんだかなあと思ってもしまうのだ。講談社漫画賞を受賞した「テレビくん」は水木の作品の中でそれほど傑出したものでもないと思う。受賞は、水木を売り出そうという商業的目的があったのではと勘ぐっている。
 「河童の三平」や「悪魔くん」も鬼太郎と同じく、貸本時代の泥臭さ怖さがなくなり、悪と戦う正義の味方になってしまった。とくに、「河童の三平」は水木の死生観がかなり色濃く出ていて、私の最も好きな水木まんがなのだが、残念というほかない。
 それでもその後の「総員玉砕せよ」や「昭和史」などには見るべきところがあり、自伝エッセーの「ねぼけ人生」には大いに笑わせてもらった。専門学校の受験で落ちたのはたった1人で、その1人が自分だったなんてことをさらりと書ける人間は、ちょっといないのではないのか。戦争で片腕を失ったことなども淡々と書かれていて(もちろん本人は相当な苦労があったのだと思うのだが)、人生の達人と言うしかない。マスコミ受けする普通の漫画家に成り下がってしまったところからよく立ち直ったと思う。
 そして、テレビで見る限りにおいては、奥さんもまたいわゆる「天然」のところがあり、まことに似たもの夫婦と言える。
 その水木の奥さん(武良布枝)が書いた自伝が「ゲゲゲの女房」。
 そのドラマ化である。前置きがずいぶんと長くなったがネットをあちこちしていたら「総集編」がアップされていたので、その感想を書こうと思い当たったわけだ(要するに「海賊版」である。大学の先輩が会長をしているNHKにはまことに申し訳ないm(__)m)。半年間続いた朝ドラをわずか3時間強に圧縮しているのでいわゆる「こく」というようなものはなく、ストーリーを追うのに精一杯なのだが、これはもう総集編の宿命なので仕方がない。
 実際の水木夫婦と比べると水木役(村井茂)の向井理も奥さん役(村井布美枝)の松下奈緒も背が高すぎるのだが、まあ朝っぱらからむさい男女を出すわけにもいかないだろうから仕方ないところだ。松下は和田アキ子よりも大きいのではないかと思える大女なのだが、でかいうえにいわゆる男顔なので貧乏生活をしていても痛ましい感じはない。この女ならどんな状況でも大丈夫だろうと思わせ、向井ののほほん顔と相まって、2人とも演技は硬いのだが、悲壮感もじめじめ感もないのがよい。
 松下の顔は確かに一反木綿にそっくりだし(^^;。
 物語の前半は貧乏生活でも視聴者は、水木しげるがまんが家として成功し、悠々自適の生活をしていることを知っているので、「安心」して見ていられるわけだ。朝の出勤前に暗くじめついたドラマを見せられたのではそれを1日中ひきずってしまいたまったものではない。かつて話題になった「おしん」なども貧乏し虐げられている話が続いても後日成功していることを視聴者は知っているという構図になっているので、心のどこかで安心して見ていられるわけだ(主人公が途中で無惨な死を遂げるなんてことは絶対にない)。
 その意味ではタイトルはともかく、見ていい気分になれる、実に朝ドラらしいテーマでありストーリーであり(長女の話は邪魔くさいのだが、次女の明るさで救われている)、水木まんがのキャラクターのアニメも効果的に使われている。ま、ある意味、朝ドラの王道のようなドラマだった。朝ドラを見ない私もこのドラマは知っているくらいで、低迷して打ち切りも囁かれていた朝ドラをV字回復させた功績はもっと評価されてもいいのではと思う。

☆★は、尊敬する映画評論家・双葉十三郎さんの採点方法のパクリで、☆=20点、★=5点(☆☆☆が60点で「可」。合格というか、まあ許せるラインということです)
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リス太郎

『ゲゲゲの女房』は最後の受験勉強を必死でやりながら見ました。懐かしいです。
by リス太郎 (2019-06-30 20:12) 

迷走ダイアリ

私は、貸本時代からの水木しげるの大フアンなので、正義の味方・鬼太郎にはかんしんしませんが、朝ドラはけっこうおもしろく見ました。
by 迷走ダイアリ (2019-07-08 10:57) 

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