SSブログ

古典ロードムービー「ユリシーズ」 [映画の雑感日記]

「ユリシーズ」☆☆★★

 カーク・ダグラス主演の「オデュッセイア」の物語。
 いわゆる元祖ロードムービーのようなもので、まあ見せ場は一つ目の巨人が出てくるスペクタクルシーンか。ただ、予算もあまりなかったのだろう、今のCGとはいわないがそれほど迫力はない。せめてレイ・ハリーハウゼンが特撮を手がけた「シンドバット七回目の航海」(1958年)に出てくる一つ目の巨人サイクロップスくらいの迫力と異形さはほしかった。本作は1954年製作なのでそれより少し前になるが現代に恐竜が出現する「原始怪獣現割る」は1953年だからハリーハウゼンに頼めないことはなかったと思う。同じ1954年の映画だったら日本の「ゴジラ」のほうがはるかに迫力もあり映画としての出来もよい。ハリーハウゼンがダメなら円谷英二に頼んでほしかった。本作はせっかくの素材を全然生かし切れていない。

 カーク・ダクラスといえば後に「スパルタカス」という傑作を製作し主演したハリウッドの大スター。ただし、ジョン・スタージェス「OK牧場の決闘」のドク・ホリディ役で人気がブレイクしたのが1957年なので1954年製作の本作のころはまだイマイチ売れなくて苦労していたんだろう。・・・と書いてきて、待てよとダグラスの年譜を見たら、1951年にビリー・ワイルダー監督の「地獄の英雄」、ウイリアム・ワイラー監督の「探偵物語」、さらに1954年にはディズニーの「海底二万哩 」など軒並み主役を演じている。おいおい、すでに売れているじゃないか。なんで出たんだろう?

 カーク・ダクラス以外では妻ペネロピーにシルヴァーナ・マンガーノ(妖女キルケーと二役)、ナウシカァ(宮崎アニメ「風の谷のナウシカ」の名前はここから)にロッサナ・ポデスタ、ペネロピーに言いよるアンソニー・クインあたりか。シルヴァーナ・マンガーノもロッサナ・ポデスタも歳とってお化けになっちゃったけど、このころはきれいだったなぁ。・・・はともかく、トロイ戦争に始まり海難、ナウシカァ、キルケー、帰国、大虐殺ととりあえず大筋は外していない。
 では、おもしろいかというと演出が平板で合戦シーンもイマイチ、特撮はイマニという具合で退屈。イタリア映画ということで同じくイタリア映画の「ニュー・シネマ・パラダイス」でこの映画のワンシーンが紹介されているが、一つ目の巨人はともかく、ラストの大虐殺などイタリア映画特有の残虐さしつこさがあり、あまり子どもには見せたくない映画なのかもしれない。

 元本の「オデュッセイア」は学生時代に筑摩世界文学大系の第1巻、高津春繁訳で読んだ。呉茂一訳「イーリアス」との合本だった。「イーリアス」がアキレウス(アキレス)の怒りとその結末というトロイア戦争のある部分を凝縮して取り出した構成の傑作だったのに対し、「オデュッセイア」は平坦なロードムービー的構成で私としてはあまり感心はしなかった。ただ、オデュッセウスのちょっと疑り深い性格は比較的うまく表現されていて、最後は神の言うことまで疑ってかかるのには笑ったが・・・。
 ちなみにジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」は、黄色い箱に入っていた新潮社世界文学全集の伊藤整・永松定訳(全2巻)を大学のとき買って読み始めては見たもののすぐにちんぶんかんぷん。現代のオデッセイの心象風景は複雑すぎて理解できず、結局1/4ほど悪戦苦闘したところで投げ出してしまった。その後、いろいろな訳が出版され、とくに柳瀬尚紀訳はかなり話題になったのだがその時のトラウマがあるためか再チャレンジする気になれずに放置。おそらく、この小説は死ぬまでに読むことはないと思う(^^;。

↓予告編
https://seesaawiki.jp/eiga2000/d/%A5%E6%A5%EA%A5%B7%A1%BC%A5%BA%A1%A61954
ユリーズ.jpg
☆★は、尊敬する映画評論家・双葉十三郎さんの採点方法のパクリで、☆=20点、★=5点(☆☆☆が60点で「可」。合格というか、まあ許せるラインということです)
nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。