武田梨奈にアクションさせろ！「三十路女はロマンチックな夢を見るか？」

「三十路女はロマンチックな夢を見るか？」☆☆

　大学にはたいてい映画研究会とか映画同好会というのがある。初めのうちは見た映画の感想をあれこれ言い合ったりする。ただし、あのシーンはよかったというのはあまりなく、あのシナリオはクズだ、あの監督はセンスがない、あの俳優の棒演技はなんとかならんか小学生の学芸会以下じゃないか、なんて悪口が主流である。そのうち、私の学生時代だと、８ミリで何か映画の１本も撮ってみようぜということになる。といっても、金も時間もセンスも演技力もないので、ものの５分も撮っていくともう行き詰るというのがほとんど。ところが、それを上映する段になると、どうでもいいようなシーンが「おっ、このカットいいねえ」などというつまらない仲間誉めになってしまう。まあ、仲間内で誉め合いいい気分になることに反対はしないが、それを押し付けないでほしい。
　これは演劇などの場合も同様で、若いころ知り合いからもらったチケットで見に行った、いわゆるアングラ劇。寺山修司、別役実あたりを気取ったのか、意味不明のやりとりが延々と続きあまりの退屈さに眠くなったところで突然ゴーゴーダンスが始まった。なななななんだ、と目が覚めたらハイおしまい。宝塚のカーテンコールでも意識したのか、手をつないでの「ありがとうございました」が延々と続き、「やったー！」「いいぞっ！」などの賛辞というか絶叫が乱れ飛ぶ。
　・・・というような映画だったと言えばわかってもらえるだろうか（混乱させただけかも(^^;）。要するに、内輪誉め仲間誉めの自主上映会とかならいざしらず、これで金とろうたぁいい度胸だ、ということ。

　監督の山岸謙太郎は知らないし、タイトルからして駄作の匂いがぷんぷんするのだが、ヒロインが瓦割りの武田梨奈で、ポスターではライフルまで持っているので、彼女のアクション映画なら退屈はしないだろうと思って見たわけだ。
　結果、大ハズレ。
　要するに、作っているほうはこれを、おもしろい、と思っているわけだ。が、私には全然おもしろくなかった。ロードムービーなんていうとカッコイイが、時間稼ぎにくだらないエピソードをただつないだだけ。だいたいタイトルからして「ブレードランナー」の原題「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」のパクリだが、ディックの原題には、アンドロイドは電気羊ではなく羊の夢を見るのだという意味合いが込められていた。重要なキーワードなのだが、本作にはもちろんそういった深い意味合いはない。これまた制作者たちはおもしろいパクリだと思っているのだろう。
　ビデオを撮って・・・という理由付けも説得力がなく、そもそもビデオ回してないじゃないかというシーンも多々あるので困惑する。しかも、夢と現実（あるいは夢と夢）とのつなぎもありきたりで、見ているほうもいいかげん飽きてくる。その結果、睡魔との戦いに必死で、最後にくだらない種明かしがあっても、やっと終わってくれたかということしかない。そこまでがばたばたのがたがたなので、ふーんそうなの、また夢ってことなんじゃないのと納得できないまま映画は終わってしまうのだ。
　結果として、アクションのできる、それも抜群にできる武田梨奈をヒロインに使った意味は全くない。ほとんど「使い殺し」のようなものだ。それに、「妄想女」は（映画の出来はひどいものだったが）「高台家」の綾瀬はるかのような女優が合うわけで、武田梨奈は少なくとも見た目はそういう女性には見えない。つまり、役に合っていないということだ。・・・リナティも、もう少し仕事選んでくれよな。

　それにしても「ネイビーシールスVSエイリアン」というトンデモ駄作を見た後にまたしてもこういう駄作を見てしまうと、残り少ない?人生の貴重な時間を無駄遣いしてしまったようで本当に疲労感だけが残る。この週末は久々に「がんばれ！ベアーズ」とか「ザッツエンタテインメント」「汚れなき悪戯」あたりでも見て、ほんわか・のんびりしてみようと思う今日この頃ではある。(^^;
※このところ「仕事したくない病」ということもあり、のんびりと「がんばれ！ベアーズ」を見てみた。久しぶりに見たのだが、似たパターンの映画にあるような気合いだけでなぜか突然つよくなるというようなこともなく、記憶にあった以上にきちんと作られていた。オニールちゃんの投げ方も誰かさんの水原勇気よりはるかに理にかなっていてよろしい。

↓予告編
https://www.youtube.com/watch?v=UsY_AbrN5RY

☆★は、尊敬する映画評論家・双葉十三郎さんの採点方法のパクリで、☆＝20点、★＝5点（☆☆☆が60点で「可」。合格というか、まあ許せるラインということです）