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創造に失敗した「天地創造」 [映画の雑感日記]

「天地創造」☆☆★★

 ムービー・プラスで繰り返しやっていたので、大昔劇場で見て退屈だったことを度外視して見てみた。1966年の作品で、監督は「マルタの鷹」(ハードボイルド)、「黄金」(西部劇風)「アフリカの女王」(戦争ロマンス)、「白鯨」(文芸)、「勝利への脱出」(戦争+サッカー)、「アニー」(ミュージカル)と、何にでも手を出すジョン・ヒューストン(出たがり屋でもあり、今回唯一の見せ場と言っていい、ノアの箱船の主人公、ノアも演じている)。
 旧約聖書の創世記の部分の映画化で、原題はズバリ「The Bible: in the Beginning」。旧約のエピソードを順を追って紹介していく(「聖書」はちゃんと読んだことが一度もないのだが、そうだろうと勝手に思っている)まあオムニバスのようなものだが、やはりクリスチャンじゃないとわかりにくい部分が多い。カインとアベルなんて名前は知っていても、ろくに聖書など読んだことのない人間には、「えっ、何で?」と思える部分多し。(←別にオードリーの春日になったわけではない。)
 この映画に取り上げられているような話は、キリスト文化圏ではある意味常識になっているので、説明過多になりくどくなるのを避けたのかもしれない。が、自分たちの知識がそれこそグローバル・スタンダードだと信じて疑わない傲慢さを感じないわけにはいかない。
 知っているエピソードでもアダムとイヴの話は見えそうで見えないためいらいらするし、結局のところスペクタクルの一点のみで「ノアの箱船」のエピソードが楽しめたくらいのものである。評価できるのは、政治的な言動にはいつも、アホか、と思っていた黛敏郎の音楽が意外や堂々としていてよかったことくらいか(音楽家としての才能は間違いなくあった)。
 いずれにしてもこの3時間は長過ぎて苦痛だった。昔見た映画を今見ると、こんなにいい映画だったのかと再評価することもあるのだが(キューブリックの「博士の異常な愛情」など劇場で見たときは何がなんだかわからなかったが、レーザーディスクず改めて見たら、意外や傑作。堂々キューブリックのベスト3に評価があがった)、改めて見てもやはり駄作というものはあるものである。多分、この映画の出来がよかったら続編を作っていこうという計画があったのだと思う。その意味で、創造に失敗した映画と言っていいと思う。
 あ、今回見ていて一つだけ発見があった。ピーター・ロレンス・オトゥールが出ていたのだ。けっこう重要な役どころなのにどうして今まで気づいていなかったのだろう。公開当時、名古屋の中日シネラマ劇場だったか毎日ホール大劇場だったかで見たのだが、あまりの退屈さにかなりいいかげんに見ていたためとしか思えない(改めて見てみると、けっこう怖い役ですぞ)。
天地創造.jpg

 以下、私が見た映画で、旧約聖書を題材にしたもの。

「十誡」1923年 セシル・B・デミル ☆☆☆
 (これはビデオで見たのだが、要するに前半がモーゼの話でそれなりのおもしろさがあるが、後半はなんと現代劇で退屈。何か時代をこえて同じような話が繰り返されるという説教臭も退屈の一因。デミルの「見世物精神」も現代では宝の持ち腐れか。前半のみなら☆☆☆★)

「サムソンとデリラ」1950年 セシル・B・デミル ☆☆★
 (怪力サムソンにヴィクター・マチュア。怪力の源である髪の毛を切られ……という有名な話は知っていたが、ただただサムソンが馬鹿にしか見えず、ベタな話も退屈で、見所は最後に神殿を壊すシーンのみ。ムキムキといえば今や誰も話題にしないが、というか当時もほとんど話題にならなかったが、昔見た「片目の巨人」のゴードン・ミッチェルはすごかったぞ。)

「十戒」1957年 セシル・B・デミル ☆☆☆★★★
 (1923年のリメイク。ヘストン、ブリンナーとも好演で、やや退屈ながら話を古代だけにしたのですっきりした。モッブ・シーンにも万のエキストラを動員したスケール感満点の堂々たる大作。例の海が割れるシーンも今となっては合成の粗が目立つが、見ておいて損はない。しかし、これだけの大作で、軍隊も出てくるのに、いわゆる戦闘シーンが全くないという不思議な映画でもある。)

「ソロモンとシバの女王」1959年 キング・ヴィドァ ☆☆★★★
 (ロロブリジータはどう見てもそのへんの怪しい女で女王に見えないのが、最大の難点。戦いはどう見ても不利に見えたソロモン軍が、「ソロモンの知恵」による鏡作戦で大勝利。この鏡作戦は「レッド・クリフ」でも孔明がパクっていたな(^^;)

「ソドムとゴモラ」1961年 ロバート・アルドリッチ ☆☆★★★
 (アヌーク・エイメはゾドムの女王としてなかなかの貫禄。ただ物語は聖書を知らない者にとってはややわかりづらい。ラストシーンにしても、もう少し「出し方」というものがあるだろう。ということで、結局、ミクロス・ローザの音楽だけしか残らなかったが、そのおかげで本来なら☆☆★★のところ★1つプラス)

☆★は、尊敬する映画評論家=故・双葉十三郎さんの採点方法のパクリで、☆=20点、★=5点(☆☆☆が60点で「可」。要するに合格というか許せるぎりぎりのラインということです。)
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