SSブログ

「突き抜けた」笑いと「こち亀」 [テレビの雑感日記]

 CATVの「日本映画専門チャンネル」で「東宝娯楽シアター」が始まった。大きな柱は森繁久彌の「社長シリーズ」「駅前シリーズ」、加山雄三の「若大将シリーズ」、そして植木等を代表とする「ニッポン(日本一)シリーズ」「クレージー・シリーズ」である。この中で興味があるのは植木等のシリーズだけで、申し訳ないが他のシリーズを見る気はない。
 その植木等というかクレージーキャッツのシリーズは、7月が第1作の「ニッポン無責任時代」で、8月が「ニッポン無責任野郎」である。むろん、「ニッポン無責任時代」はしっかりと見た(映画館では1度見ただけだが、その後テレビで3回は見ている。ビデオ、レーザーディスク、DVDで見た回数を加えると2桁になるかもしれない)。
 おもしろかった。第2作の「ニッポン無責任野郎」は「時代」が大ヒットしたので急遽作られたと思われるお手軽作品で「時代」よりは落ちるが、それでも十分におもしろい映画で、これも映画館に始まり数回は見ているが、今度も見るつもりである。待ちきれなくて、家にあるDVDの「クレージー黄金作戦」を見てしまった。
 と同時に、日本の笑い(コメディー)ということで考えると、これは相当異質な笑いだなという気もした(とくに「時代」)。
 なぜこんなことを言うかというと、香取慎吾主演のテレビドラマ「こち亀」第1回を見たからである。「こち亀」のまんがはもう何十年も前に「ジャンプ」で読んだだけでアニメも見ていないので昔の印象だけで書くが、あのまんがはもっと突き抜けた笑いのまんがだったと思う。大人ものでは悪徳警官は珍しくないが、博打はうつ、他人ものは盗む、それでいて反省がないという警官を登場させただけでもその突き抜けぶりがわかろうというものである。
 当時(要するに数十年前)日本で最も突き抜けた笑いのまんがを描いていたのは山上たつひこで、「チャンピオン」の「がきデカ」なんてのはどうってことないが「喜劇新思想大系」にはぶっ飛びましたなぁ。筒井康隆の「アフリカの爆弾」なんて、もともとの小説が相当ぶっ飛んでいるのにそれをさらにぶっ飛ばしてしまったのだから、みていて思わず椅子から転げ落ちそうになったほどだ(←嘘です)。いまでこそ秋本治なんて名前を使っているが「こちら葛飾区亀有公園前派出所」連載当初は秋本ではなく、「山止たつひこ」なるペンネームをつかっていたのだから、作者の目標は、山上だったのではないのか、と推測したい。
 日本の喜劇というと「寅さん」に代表されるように人情喜劇が主流である。外国ものでも人情をからませたチャップリンの喜劇は受けるが、キートンやマルクス兄弟などはあまり受けていないと思う。少なくともそういった人情喜劇の流れからは「こち亀」は無縁だった。だから、私はけっこう愛読したのだと思う(といってもほんの初期だけだが)。
 ところが、ドラマの「こち亀」はかなりの人情ものとなっていたのだ。ええーっ、神輿だってぇ。下町がどうしたこうしたなんて、私には全く関心がない。これはちょっと違うのではないか、と思いつつ見た。つまらなかった。もっとも、ほとんどの作品が、人気がでると一般的にとんがった主人公の角がとれ、いい子になる傾向があるので最近の「こち亀」まんがはけっこう人情ものに流れているのかもしれない。残念だが、そのほうが一般受けするのである。大昔の「ハリスの旋風」の石田国松くんも登場したころはめちゃくちゃのガキ大将で爆笑ものだったが、いつの間にかいい子になってしまい、(私的には)つまらなくなってしまった。
 ついでに、どうでもいいようなことだが、確か両さんは春日八郎のフアンだったと思うが今もフアンなんだろうか。私も春日の八っちゃんの歌は好きだが(「長崎の人」「ロザリオの島」「赤いランプの終列車」なんかいいねえ)、最近では春日といえばオードリーだもんなあ。「ダーティハリー」にあこがれている大金持ちお坊ちゃま・中川は今でもマグナムをぶっ放しているんだろうか。何のときだったか、急ぎのとき垂直離着陸機ハリアーを呼んだこともあった。そういえば秋本・カトリーヌ・麗子もオリンピックの射撃で金メダルをとったような記憶がある。それほどの逸材がなぜ亀有派出所にいるのかは不明。勤務中に競馬をやったり、まんがとはいえそこまでやってしまっていいのか、と思ったほどである。そういえば、やくざもビビルほどの入れ墨を背中に入れている警官や、元キックボクサーのおかま警官なんてのもいた。それほどぶっ飛んだ設定だったのである。とんがっていたのである。そこに私なんぞは、ちょっとクレージーの笑いに通じるものを感じていた。それが、人情喜劇になったのではどうしようもなく、見る気もしないわけである。
 ま、それはともかく、そんなことをあれこれ考えてくると、植木等の「ニッポン無責任時代」の笑いは、日本にあってはやはり相当異質であることがわかる。だいたい、この平均(たいら・ひとし)という男、飛んで来たボールを屋上から下へひょいと投げて知らんぷり、社長室の葉巻は盗む、それでいて、三流大学出だからどうせ出世は無理だし適当にやっていくからよろしく、との賜る(それでいて、社長になってしまうのだが)。そこには、こつこつやる奴はごくろうさんという笑いがあるだけで、人情の欠片もない。
 いったいこの笑いはどこからきたのか。
彼らがジャズマンだったことも影響しているとは思うが(笑いに軽快なリズムが感じられるのである)、リーダー・ハナ肇の「馬鹿シリーズ」などは監督が「寅さん」の山田洋次ということもあり、人情喜劇そのものである(つまり、私は好きではない)。僧侶をやっていた植木のお父さんが仏像を叩いて、こんなものはただの木だ、なんて言ったという話を聞くと、植木家の血筋なのかもしれない。が、話が取り留めなくなってしまったので、このへんで。
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。