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今さらの「ビューティフルライフ」だが [テレビの雑感日記]

「Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜」☆☆☆★★★

 先日、TBS「南極大陸」のつまらなさ、キムタクの演技のひどさについて書いたが、とくに40近い男が、ため口のキムタクしゃべりをしているのが何とも似合わないことを指摘した。ということは、あのキムタクしゃべりが合う年齢があったということにもなる。その通り、キムタクが光り輝いていた時代も確かにあったのだ。そのことを、このドラマで痛感した。
 YouTubeで別の映像を探していたら「Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜」というのがどういうわけか右のサイドバーにサムネイル表示された(タイトルは「Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜」と出るので、これが正式のタイトルなのだろう)。表示されたのは1-1なので第1回のPART1。10年くらい前にキムタク・ドラマとして話題になったのでタイトルくらいは知っていた。テレビが飛びつく安易な企画は、子ども、動物、そして難病物。「なんだかなあ」と思って1度も見なかったが、けっこう話題にはなり確か最終回は40%を越えたはず。と思って調べてみたら関東地区平均視聴率32.3%、最高視聴率41.3%、瞬間最高視聴率に至ってはなんと47.1%。
 こんな信じられない視聴率をとったドラマを全然見ていなかったというのも、ある意味すごい。確か木村拓哉と常磐貴子のラブストーリーで、身障者の常磐が最後に死んじゃうという臭いストーリーだったはずだ……。キムタクというだけでそんなに視聴率がとれる時代があったんだ、なんとことを考えながら、ちょっとだけのつもりで見始めた。
 常盤貴子が、まあ何と言いますかだっさいぼさぼさヘアスタイルで車を運転しながら携帯でしゃべっている。「ん、雨、降ってないよ」と窓から手を出したところにバイクに乗った木村拓哉がやってきて、常磐の手に当たりそうになる。文句を言うが、常磐はしれーっと行ってしまい、追いかけたキムタクが常磐の車の横(といってもそれなりの距離はある)にバイクを止めると、「車から降りられないからバイクを動かして」と言われる。距離は十分あるじゃないかと思うキムタクはぶつぶつ言いながらバイクを動かす。と、車の中から車椅子が出される。そこで初めて常磐が障害者だと気がつく。・・・うまい出だしである。
 それにしてもベタなストーリーだなぁと思いながら、いい歳こいて、つい最後まで見てしまった自分が怖い(これでは「ゲゲゲの女房」を熱心に見ていたIAさんのことを笑えないぞ)。一言弁解しておくと、ベタはベタなりによくできていたということだ。それと、主役の木村拓哉と常盤貴子が実にぴったりというか役柄に合っている。
 最近のキムタク・ドラマはキムタク着せ替え人形展のような感じで、はいキムタクが今度はこんな役をやりますよー(レーサーだったり、アイスホッケーの選手だったり、映画では武士だったり(^^;)ということばかりが強調され、かんじんのストーリー構成自体はいい加減なものが多い。しかも、キムタクはあいかわらずのキムタクしゃべり(ちょっとすねたようにごにょごにょと変な若者言葉でしゃべる)なのでこちらもうんざりしてしまうわけだが、10年ちょい前のこのドラマのときにはまだ26-27歳くらいなので、それほど痛い感はない。服装や仕草も役柄にぴったりで、キムタクしゃべりもこの年齢の若者ならと受け取れ、違和感はない。まあ、40歳近くなっても同じようなしゃべりかたしかできないところが、キムタクの辛いところなのだが、それはまた別の話。このドラマでもカリスマ美容師というか、カリスマ・ヘアメイク・アーティストというかいい気なものだが、ストーリーがきちんと作られているので嫌みな感じはない。
 脇役陣もなかなかの力演で、常磐の家族=父(河原崎建三)、兄(渡部篤郎)そして母(見たことのあるような顔なのだが名前は知らない)など、うまく「家族」のイメージを作り上げている。常磐の友人の水野美紀、常磐に想いを寄せる的場浩司も悪くない。ただ、キムタクの同僚でかつての恋人・原千晶とキムタクのライバル(と本人は思っている)西川貴教の2人は、どうにも美容師に見えなくてやや減点か。
 というようなことを含めて、最後まで見ると、このドラマの主人公は、実はキムタクではなく常盤貴子だったと知らされるドラマでもある。この人、よーく見るとそれほどの美人でもないのだが、いきなり脱いだ(「悪魔のKISS」)ことなどからも、ともかく女優としての根性が座っている。根性が座っている女優というと、最近ではさらに上をいっているかもしれない寺島しのぶが思い浮かぶのだが、まあ見た目はスタイルも含めて常磐の圧勝だろう。しかし、だからといってわざとそうしたメイクだったにせよ、最初の不細工で嫌みな女が(いわゆるアイドルならこの時点でもう出演NGだろう)、どんどんかわいらしくきれいになっていく。最後は本当にチャーミングに見えるのだが、別に整形しているわけではないのだから、計算された演技力の賜物だと思う。
 キムタクに座布団1枚なら、常磐さんには2枚。
 ラストの、
「あなたに逢って、私の人生は星屑をまいたように輝いたんだ」
 というナレーションは、常磐さんのしゃべり方がとてもすてきで、思わず「よかったね」と声をかけてあげたくなったほどである。繰り返しになるが、ベタなドラマではあるが、ここまできちんと作ってあれば、リアルタイムで見ていた人は、間違いなく次週も見ちゃったと思ったはずだ。
 やはり、視聴率40%越えは、ダテではない。
 この後も「セカチュー」「余命嫁」など、いわゆる難病物の話題作、ヒット作はあったが、やはり一線を画すものがこのドラマにはある。
 それは、主人公の2人はもちろん、周囲の人々がその2人の中に吸収されてしまうことなく(それでは、その人たちの人生の意味がなくなってしまう)、それぞれの思いで生きていることをきっちり描いたからに他ならない。サッカーの試合にたとえれば、下手なドラマは選手全員がボールに集まってしまうが(出演者すべてが自分の人生がないかのように難病の主人公のことばかり心配する)、うまいドラマは各々が自分のポジションを考えながら試合を組み立てていく(自分の自立した人生の中で主人公を心配する)のである。つまり、難病物のお涙ちょうだいだけに頼らず、青春ドラマとして、人間のドラマとして自立していたということだ。率直に拍手したい。
ビューティフルライフ.jpg
蛇足・たった10年ちょっと前のドラマなのだが、キムタクをはじめ登場人物の多くが、普通にタバコを吸う。街中にはタバコの自販機があちこちにあり成人男性の4割が喫煙者だということを考えると、ドラマに出てくる人間たちのうち1人や2人がタバコを吸うのは当たり前である。最近のドラマのように誰1人としてタバコを吸わないのは不自然きわまりない。製作者は誰に対して腰が引けているのだろう。

↓冒頭
http://www.youtube.com/watch?v=RMUBf-HQG6U
↓ラスト
http://www.youtube.com/watch?v=R2OJyucYBhA&feature=related
(ちなみにYouTubeに全編がアップしてある動画は英語圏で放送されたものらしく、英語字幕が入っている。が、「田辺のおばちゃん」が「Aunt Tanabe」ではなく「Tanabe Obachian」、「お兄ちゃん」が「My brother」ではなく「Oni-chan」なんて書かれていたりする。また、「ドラえもん」なんて単語が出てくるとその解説字幕が出たりするのだが、・・・いったいどういう人に向けた字幕なんだろう?)
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